
Review: SOLVENT COBALT - Marigold 12” (by Kazu Acclaim)
SOLVENT COBALT - Marigold 12”
東京ノイズロック / コールドウェイブ / デスロック・パンクス “SOLVENT COBALT” のニュー12”EP"Marigold"が、これまで彼らのリリースを主にしてきたAsylum Partyよりリリース。
A面には本作のタイトルともなっている"Marigold"及び"Nonsense Party"の新曲2曲を収録。既にライブで演奏されている曲なので、待ちに待った作品化と言えるだろう。B面には"ANONYMOUS"なるDJ / リミクサーによるタイトル曲"Marigold"のリミックス・バージョン2曲を収録。その"ANONYMOUS"によるリミックスは、反復する「悲壮的な」ピアノ・サンプリングをベースに、80年代ヒップホップ・トラック制作の手法の一つ (異端) である「エディット」が使用されている。
レーベルの説明によれば、本作のリミックスは「対するリミックスは、ロクサーヌ・シャンテ (というよりマーリー・マール)がテクノデリックする、そう、それまでの過去を再構築することが最新だった90年代後半に引き戻されてしまいそうな、原曲のもつ彼ら独特の世界観をシークエンスしつつの、骨太な80年代ミドル感全開でシリアスとダンスが混じりあうという、聴けば聴くほどじわるダンストラック。」ということである。「知っている人は知っている」の話で申し訳ないが、このリミックスを聴くかぎり80年代中期に活動を開始したUSの女性ヒップホップ"Roxanne Shanté"の「Roxanne's Revenge」(1984年作)のことを指していると思われる。まさにレーベル指摘するところの「原曲のもつ彼ら独特の世界観をシークエンスしつつ」再構築された刺激的なリミックスである。
歌詞を読むと、彼らの「世界観」―彼らの日々感じている感情がひしひしと伝わってくる。「Nonsense Party」(ナンセンス・パーティー)に次のような一節がある:「本音と建前が回転している / 鏡の一つもないこの部屋」・「みんなで綺麗な絵を眺めながら / ひきつった顔で笑いあう」。この社会では人々は「憂鬱」―そのことに関して話すことなく、多くの人々が「憂鬱」に生きている。この心の状態は憂鬱になった人々が助けを求めたがらないので扱うことが非常に難しい。最終的に自らを追い込むまで体面を保って笑うことを好んでしまうこともあるし、私たちが「冗談」 (笑い) と「苦痛」を共有してしまっていることは「事実」でもあるだろう。私はSolvent Cobaltの歌詞からそんなことを考えさせられた。ただ、歌詞の中から「希望」が見えたことを最後に付け加えておきたい。
Released by Asylum Party (2020)
Reviewed by Kazu Acclaim