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MALIMPLIKI - Elasta 7"EP (ACM030) interview

2015年2月にリリース―即ソールドアウトになったMALIMPLIKI(東京/静岡)の当レーベルからの1st 7"EP『Elasta』に付属していたインタビュー冊子の全文を公開。2021年3月30日には、東京のHardcore Survivesから2nd 7"EP『Libervola』 も再プレスされるので、このインタビューでMalimplikiの原点に触れてみてほしい。

MALIMPLIKIインタビュー
『みんな自分自身が弱いって自覚すればいいと思う。』
『気づいたときが革命だから。』

ななえ(Malimpliki)
ひろえ(Malimpliki)
泉(Malimpliki)
ハセオ(Acclaim Collective)

2014.1.12 at 渋谷/神楽屋(かぐらや)

「バンド名の意味とエスペラント」

ハセオ:じゃあ、始めるね。バンド名の意味と由来は何なの?

ななえ:バンド名の由来は、エスペラント語で「Malimpliki」というのは混乱したものを解きほぐしていくという意味があって。その意味もすごく気にいって、固すぎもなく響きもよかったから、みんなに相談して。候補が2つあったんだけど、その中の1つの「Malimpliki」になった。
ハセオ:曲は全員でつくってる?
ひろえ:ななえちゃんが持ってきて。
泉:メインはななえちゃん。で、ひろえちゃんが足したり。
ななえ:つくってくるって言っても、A・Bちょっと考えてきて、ひどいときにはAとかしか考えてこない。もしくは、スタジオでこんな感じの始まりでって話し合って決めるほうが最近は多いかな。ああ、出来ちゃったみたいな。
泉:考えたら、出てきたみたいな。
ななえ:そういう感じかな。

ハセオ:音楽的な要素や影響はどういう?

ななえ:それぞれあるけど影響したものを全部入れちゃうと変な感じになるから、私はクラストでDビートでポンコツな感じをやりたいっていうのがあった。そこに泉ちゃんのドラムがちょうどいい感じではいってね。
ハセオ:ああ、いいよね、ドラム。
泉:みんな「いいよね」の後に「ニコッ」ってしてくれる(笑)
ななえ:で、ひろえちゃんのブリブリしたベースの音に、見た目からは想像できない野太いコーラス?
ハセオ:コーラス、カッコいいよね。
ななえ:私とはまたちがった声質だったから、やってみて、おおよかったと思った。

ハセオ:歌詞がやはり政治的だけど、音楽とそうした要素って融合できると思う?

ななえ:うーん。というか、音楽がないとつまんないかな。何か言わなきゃっていう使命感は別にないから。
泉:方法の1つというか…
ななえ:バンドは楽しいからやるって感じかな。

ハセオ:歌詞は誰が書いてるの?

ななえ:歌詞は私。
ハセオ:ななえちゃんが歌詞を見せて相談したり?
ななえ:うーん、全部完成しちゃってから見せてるかもしれないけど… でも、この曲はこんな感じのテーマでいいかな?っていうのは言ったりする。それで、練習の合間に軽く内容についてちょっと話したりはする。そこで、これはちょっと… ってなれば、反応を見て変えたり。
泉:こうしたいって言ってくれるから。私が知らないことでも、こういうことがあって、こういうことをもって、この曲にしたいっていう一連の流れを全部言ってくれるから。私が知らないことでも、ああそうなんだっていう。それについてどう思う?っていうのをちょっとやりとりすると、想いが一つになって曲がつくれるからね。
ひろえ:出された議題で私だけそれはちょっとちがうかもと思ったら、「いまはじゃあこの内容じゃないね」みたいなこともありましたね。
ななえ:一応3人でやってるから。やっぱ気持ちよく、気持ちをのせて曲を一緒にやるっていうのがバンドだと思う。「何をやっているか」「何をうたってるか」共感しながらやったほうが面白みも増すし、前からひろえちゃんとは話すけど、あまり固くならないようにしたいねとは言ってるよね。
ひろえ:ガチガチでは。
ななえ:そうそう、全然ゴリゴリじゃないし。

ハセオ:歌詞がエスペラント語だけど、なんでエスペランド語でうたおうと思ったの?

ななえ:まず響き?かな。
泉:私は本当の意味で共通語というところに惹かれる。うん、本当の意味で中立な言葉だから。
ななえ:私は後付けになっちゃうかもしれないけど、やっぱ響きが好きだった。Voĉo Protestaの影響はあるだろうと思う。
ハセオ:録音はVoĉo Protestaの河口さんだよね?
ななえ:そう。
ハセオ:やはりその辺りの影響があると。
ななえ:うーん、なんか分かってくれるかな、やりたいことをっていうのもあった。プロのエンジニアにお願いしてっていう感じにもなってなかったし、だれか友達で頼めそうな人はいないかなっていうのは話してた。それで、別のバンドで河口さんにお願いしたのを思い出して、連絡取ってみたら、ぜひっていうことでやってもらえることになって。
泉:ありがたい。
ななえ:ほんとよかったね。
泉:うん、ほんとよかった。

ハセオ:Acclaim CollectiveからEPをリリースすることはどう思ってる?

泉:ありがたい。
ひろえ:嬉しかった。
ななえ:全然知らない人より知っている人と出せるのはいいかな。
ひろえ:ライブを見て出したいと言ってくれたのがすごく嬉しかった。
ハセオ:最初はテープで出すとか言ってたじゃん?で、ななえちゃんとやりとりしてて、俺が出してもいいよって言ったら、ななえちゃんが「マジで?」ってなって。
泉:自分たちではまずはテープでと思ったけど、ライブを見て判断してくれたんだったらありがたいなと思う。

「バンドを始めた理由」

ハセオ:みんなMalimpliki以外にもバンドやってるよね?なんでMalimplikiをやろうと思ったの?特定の人にメッセージを伝えたいとかはあった?たとえば、女性に対してとか。

泉:私は単純にクラストのバンドやってみたいっていうのもあった。静岡でやっているバンドは、まあ言い方悪いけど、ざっくり言っちゃえば、メッセージ性っていうより自分たちの心のなかにあることをうたうような日記みたいな感じだから。うーん、そうじゃなくて、「一緒に考えようよ、思っていることを唄にできるのは?」って考えたら、こういうバンドならそういうメッセージを伝えられると思った。うん、出来るかなと思った。元々はそんな感じ。
ハセオ:ひろえちゃんは?
ななえ:ひろえちゃんはなんだっけ?私がやらない?って声かけたんだ。
ひろえ:そうそう、最初は音を聴かせてもらって、かっこいいなと思って。私もこういうクラストのバンドをやったことがなくて、ライブ見て音がかっこいいと思っていただけだったので。ちょっとやってみたら、楽しかったので。

「全員女性であること」

ハセオ:Malimplikiはいわゆる「女性バンド」だよね?そういう意図は結成当初からあった?ヴォーカルだけが女性だったり、ドラムだけが男性だったりっていうバンドもいるけど、Malimplikiは全員女性のバンドだから。

泉:まあ、前身のバンドは男の子が叩いてたけどね。結局、私はパートに別に拘りがなくて、いないならやる、やりたいという感じだった。パートに拘ることよりもバンドとして早く活動できるようになるほうが優先だった。早く動けるようになるには自分がやるほうがいいかなと思って。私は別に男女に拘りはなかったけど…
ハセオ:拘らない?
泉:うん、女の子のほうが楽しいかなと。
ななえ:私は別に男の子に対しての敵対意識じゃないんだけど、圧倒的に女の子でバンドやってる子少ないし、ライブによく来ているひろえちゃんやライブで盛り上がるともうなりふり構わず暴れちゃう体を押さえられないような泉ちゃんとか、そういう子たちとバンドができたら、何か面白いことできるんじゃないかなとは思った。
泉:あれ、そんなところ見せたっけ?(笑)
ななえ:あと、ちょっと恥ずかしいとか、男の子にどう見られるのかなとか、そういうのをやっぱ無意識に感じちゃって、萎縮しちゃってる女の子とかもパンクの中でもいるかもしれない。だから、そういう子たちがこんなやっちゃってんだみたいに感じてくれたら、それはそれで面白いかもしれないって。この面白い3人ー面白いひろえちゃん・泉ちゃんとやったら、何か面白いことできるんじゃないかなっていうのはあったかな。
ハセオ:うんうん。
泉&ひろえ:うん。
ななえ:今面白いからね。ちょうどいいし。前からこの3人はあまり無理してない感じがよくって。
ハセオ:ああ、俺もそういう感じはする。
ななえ:女に生まれたのは別に選べないし、男の人もね。なかには女がくる場所じゃないとか思っている人もいるかもしれないけど。
泉:やっぱいるのかなー?
ななえ:やっぱそういう人相手にしても面白いこと生まれないし、だったら自分たちが面白いことやればいいだけだと思う。
泉:私は静岡だから、またちょっとちがうかな… うーん、でも逆に言えば、静岡はジャパコアがメインだから。まあそう考えている人もいるかもしれないけど。
ハセオ:そう感じたことはない?
泉:感じたことがないっていうか、私はその辺完全に鈍感になってるから… 私はそもそもそう思わずやってきたから。
ななえ:鈍感になってたほうが面白いけどね。いちいち気にすることでもないし。
泉:なんかライブで女の子は横と後にいなきゃいけないみたいな、そういうのがさー好きなところで見たいじゃん。そういうちっちゃいことはもしかしたらあるのかな。単純に男の人の数が圧倒的に多いというのはあるんだけど。
ななえ:好きなところで見てれば、そういう人も別になにも言わなくなるんじゃない?
泉:分かんない。他の人は気にしてるのかなと思って。私は何も気にしてないから。
ななえ:気にできないよね。盛り上がっちゃったらね(笑)気づいたとしても、気づかないふりしてたほうがいいと思う。だから「なんすかー」みたいな感じで、笑い飛ばしちゃうくらいの。
泉:だってライブだからね、みたいな(笑)

ハセオ:今の話に続くんだけど、「女性バンド」っていうと、いわゆるフェミニズムや反セクシズムといった政治的・社会的なスタンスを持ってるように思われることもあるよね。そう見られたりするのは嫌ではない?

ななえ:嫌ではないけど…
ハセオ:Malimplikiにそういう直接的な歌詞はないよね。
泉:ないよね。
ひろえ:期待されたら困るって感じですね。そういうのはね。
ななえ:普通にフラットな感じでどんな話題でも話せたらいいと思うけど。まあそういうのもありつつ、女の子でもやりたいって思うんだったらやればみたいなメッセージも同時に発せられたら。
ハセオ:そういうところがちょっとフェミニズムっぽいけどね。
泉:ああ。
ひろえ:でも3人で話しているときは何だろう、女性がもっといろいろできるようにするべきとか、そういうテンションではまったくないですね。それぞれ大変なことがあるから、お互い分かち合っていったほうがいいんじゃないかっていうようなスタンスに近いですね。
ななえ:そうだね。
泉:お互い褒め合って。
ななえ:3人とも褒められて伸びるタイプだから、練習中もなんか求め合ってる感じだよね(笑)「ここいいねー」「その音最高なんすけどー」とか、そういう感じでね。私、苦しいの嫌いだから(笑)私、あんま反骨精神とかないから(笑)ストイックさとか全然ないのもよくないのかもしれないけど、まあそれはそれでよいと思ってる。
泉:うちら的にそう見られるのは別に嫌じゃない。まあ、女の子3人だからどう見られるっていうのは、たぶん見る人次第だと思う。でも、私たちがうたっていることはたぶん男の人でも女の人でも言えることで。だから、女だからこういうのとか、女だからこうしたほうがいいって思うこともあれば、男だからこうしたほうがいい、男だからこういうのはしないっていうのも結局一緒のことで。たまたま私たちの性別が女だったから、その同じ仲間としては女の子に対してのメッセージってはなるけど。内容としては、私は別に性別に拘ってないかな。ななえちゃんが書いてるから。
ハセオ:そこがかっこいいよ、Malimplikiは。
泉:褒められた(笑)
ななえ:褒められると伸びるタイプなんです(笑)
泉:謙遜しないで真に受けるタイプ(笑)

ハセオ:たとえば、Malimplikiを紹介するときに「オールフィメール・バンド」って書かれたりするのも嫌ではない?

泉:実際女だからね。
ななえ:女は女だから。
泉:まあ、実際男の人のほうが多いから、女だよっていうのを出したところで別に気にはならないかな。
ハセオ:俺もちょっと迷っちゃうのね。いちいち書かなくてもいいかなと。
泉:あえて書くかみたいな。私としては、全員日本人ですって書いてるのと同じかなと。
ななえ:だから、私はやっぱり何でも気張らない感じ、何に対しても虚勢を張らない感じのメンバーだから心地いいんだと思うよ。

ハセオ:じゃあ、”Elasta” 7"EPの曲について聞いてくね。「Decida momento」(決定的な瞬間)は「生きるんだ、とにかく楽しむんだ」とうたっているけど、そう思えたきっかけはパンク?

ななえ:私はパンク。それとパンクを聴いている友達とか。友達から広がってった繫がりから。私、別に変じゃないんだなと思ったから。私の悩んでたことが変じゃなかったんだと思ったら、急に「パッー」って楽になった。
ハセオ:パンクって出会える人が限られてると思うけど、自分が影響受けたパンクをパンクを知らないを人にも伝えたいとかはある?
ななえ:なんか面白いことあるよって、そう伝えられたら楽になる人もいるんじゃないかなと思うことはあるけど… こうしろああしろっていうのは絶対嫌かな。
泉:もっと選べるよみたいな。
ななえ:きっかけになってたとしたら、嬉しいなみたいな、そんな感じ。何してんのみたいな押しつけは全然ないし。他の2人もないと思うから。
ハセオ:俺はそういうの大事だと思うのね。パンク以外の人にも伝えるのは。俺も生きるのが楽になったから。俺も20代のときはやっぱ就職しなきゃだめとか思ってたし、就職が悪いとかそういうわけじゃなくて。言ってみれば、「仕事」中心の人生のことね。俺も仕事となると、他人に勝ちたいとかあったのね。パンクと出会って、生きるのがすごく楽になったっていうのある。
ななえ:一般企業だとやっぱ結果を求められるし、自己批判をしなきゃいけない状況に追い込まれることが多いと思うんだよね。でもなんだろうな…
ハセオ:仕事することは悪くないんだよね。
ななえ:そうそう、仕事しないとやっぱ家賃払えないし、電気代払えないし。私はそれを全部放棄しろとかいう考えはないから。仕事は仕事としてやったとしても、仕事場で自分の人間性を否定されるような言葉を言われたとしても、気にしない生き方?気にしない考え方?こういう思考回路になれたのは、パンクやパンクを聴いている友達と出会ったからだと思う。それで、自分はだめなんだみたいな感じにならなかったのはラッキーだったなとは思う。そう、生活の一部。
ハセオ:やっぱ生活と切り離せないという意識はある?
ななえ:私はね。
泉:普段の生活とパンクが?
ハセオ:そう、たとえばバンドやったりライブすることと普段の生活や仕事。そういうのは結びついてる?
泉:私の場合これからずっとバンドやっていくと思うけど、でも会社と自分の温度差がもうめちゃくちゃ激しくて。嫌悪感っていうか、気持ち悪いなって思うくらい考え方が違いすぎて。ああもうマジで無理と思ったんだけど、でもMalimplikiを始めたら、自分のなかで整理がつくっていうか。
ななえ:ほんとに?
泉:なんかちょっとよく言ってるけど(笑)

「Tiu estas mia(これが私)」

ハセオ:「Tiu estas mia」 (これが私)は個人的にいちばん気に入った曲なんだ。この曲のなかで「それはあなた自身が何であれ、でもそれ以上に誰がどのように見るかは関係ありません」とうたってるよね。俺も40代過ぎて、こういうことが大事だと思ってるんだ。本当に「これが自分だ」と思えるのが大事だと思うのね。でも、そういうふうにほとんどの人が思えないというか、自分の欠点や不安を他人のせいにして安心したりするよね。そういうところは意識的に自分で克服していかないとだめだと思うんだけど、そうするためにやってることはある?

ななえ:うーん、なんだろ。やってはないけど、自分で考えていいと思ったら、やっちゃえばいいじゃん、って感じかな?まあ周りがとやかく言ったところで、私の人生に対してそういう人はただ言うだけで責任取ってくれないし、私の人生だからね。別にそんな気にすることじゃないと思う。たとえば、この曲だと、みんなにも言ったけど「何々らしさ」というか、私は偶然女に生まれて異性愛者だったから男の人好きだけど… ゲイやレズの人たちの気持ちにはなれないけど、他の人の考え方を否定したり、自分の基準に合わせて評価しない人生のほうが楽しいことがいっぱいあった。そう思えたら「これが私」って心から言えるようになるんじゃないかと思う。
泉:同じようなことなんだけど… パンクの人たちやバンドで関わる人たちはそうでもないんだけど、その他で関わる人たちは人のことをああだこうだけっこう言うなと。もしかして私、あんまり人に興味がないのかもしれないけど、そんなちっちゃいことまでよく言うなと。仕事とかでもね。普通こうしたらこうじゃないみたいな?
ハセオ:ああ、それで安心しちゃうんだよね。
泉:人のことを許すというか… あの人はああいう人でこの人はこういう人でというのを良くも悪くも理解すること。それで自分はどうだろうと思ったときに、自分はこういうところがあるって考えたりすると、この曲にも繋がるかなと思う。私、なんかいいこと言ってない?(笑)
ハセオ:いや、素晴らしい。
ななえ:カッコいい(笑)
ハセオ:俺もそれすごい思ってるの。
泉:なんかね、今考えてたらそれ全部、そのフラストレーションは仕事なんだよね。もうね、逆にイライラするけど、それでやっぱり勉強にはなる。
ななえ:みんなもたぶん苦しんでんだよね。自分ってこれでいいのかなと思いながら、相手を批判してるかもしれない。そう思ったら、変な言い方もしれないけど、他人をとやかく言ってる人が愛おしくなってきてね(笑)「頑張ってんなー」みたいな。バカにしてはないけど、なんか言ってるよとか、なんかもがいてるなとかね。
ハセオ:だから、そういう部分を見れる余裕ができたと。
泉:私は全然その境地に達してないもん。普通に「はあ?」とか思っちゃう。
ななえ:自分の気持ちを穏やかにするための方法でもあるから… まあ、ある人から見れば、人のことをバカにしてるのかと感じる人もいるかもしれないけど。
ハセオ:ああ、余裕ができちゃうとね。
ひろえ:言った分だけ自分に縛りがかかるっていうのはすごくあると思う。人のことを言った分、自分に返ってくるところはあると思うし。

「Anti nuklea(反核)」

ハセオ:「Anti nuklea」(反核)はタイトル通り反核の曲だよね。 この曲はやっぱ3・11に影響受けたの?それとも元々そういう意識があったの?

ななえ:私は前から。私の個人的な意見は前から反原発だったし、原発なんて早くなくなればいいと思ってた。家族や親戚同士もバラバラにしちゃうような原発のそうしたシステムに対してね。地方の仕事がないところに原発ができて、人の繫がり自体もズタズタにしちゃうそのことだけでも私は原発に反対だった。前からそういう意識はあったけど、3・11以降取り返しのつかない事態になっちゃって、Malimplikiでもそういう曲を1曲でもつくれたらいいなっていうのがあってつくった。
ハセオ:何かを言いづらい状況もできたよね。原発のことをね。一方でそういうことを知った人もいるけど。
ひろえ:私もその口ですね。小岩のエムセブンで反原発の問題について上映会やってるとかフライヤーで見て、なんか他人ごとじゃなかったんですね。でも3・11の事故があって、ここで何もしなかったら、子孫に申し訳ないなと思って。それで原発気持ち悪いなって思ってます。前に母親がPTAの集まりで柏崎刈羽原発を視察に行ったりしたんですよ。で、ただ視察しに行っただけなのに、いろいろお土産みたいなのをもらってきて、なんで行っただけなのにこんなものもらえんの?なんかお金すごい持ってんのかな、気持ち悪いなみたいなのはなんとなく感じたんです。ただやっぱりあの事故があるまでは、私はやっぱ自分ごとじゃなかったですね。東京の電気をつくるために福島に原発があったってことさえも知らなかったぐらい。ちょっと恥ずかしいんですけど。
泉:知ることは大事だよね。
ハセオ:だから東京に電気を送るために福島が犠牲になってるという。東北って全般的にそうだけど、たとえば青森の六ヶ所もね。
泉:私に関してはほんと車で一時間かからないところに原発があるから、やっぱその3・11でちゃんと気づかされたっていうか。なんとなく近いところに原発はないほうがいいよなっていう。でもやっぱそんなに頭になくて。焼却の問題でもほんと近くに焼却するところがあって、いろいろ学ばされたことは多い。まあそれでも遅いなと今は思ってる。でもこれはたぶん3・11があったから、うたうとかじゃないんだよね。日本に原発がなくなったとしても、日本の企業がどこかに原発を輸出したりして日本でつくらなくても結局どこかでお金が動くから…
ハセオ:日本は原発を輸出しているからね。
泉:日本で原発に反対してても、輸出してたらそれにも反対しなきゃ同じだと思うし… まあ、ずっとうたわなければいけないっていうか、意識がある人たちがずっと言い続けなきゃいけないことだなと。
ななえ:非核三原則とかあるけど、日本は戦争にずっと加担してるし。
ハセオ:9条もそうだけど、まがいものの法律だからだよ。
ななえ:これからもどんどんやばくなるんじゃない。なんで安倍さんがずっとあの地位にいるのか。安倍さん、ほんとにやばいじゃん。特定秘密保護法に関してもそうだし。私、小難しい言葉とか全然分からないんだけど、楽しく毎日を過ごしたいから。
ハセオ:逆に3・11以降、小難しい言葉使う人増えたよね。
泉:理屈っぽくなった人いっぱいいる。でも、結局いろいろ学んだところで感じることはすごくシンプルだから、知っている人は分かりやすく伝えてほしい。逆に理詰めにされるとやっぱちょっと難しい話は… ってなる。原発は政治的な問題で、自分の生活とは関係ないことだって思わせちゃう。それがほんとにやだ。静岡なんて原発すぐそこだよって思うし、まだ言ってんのか、まだその話してんのか、駅前で反対行動しててもまだやってんのかみたいになるとね。私は変な被害妄想かもしれないけど、そう感じてんじゃないのかと勝手に思っちゃったりしてる。何も終わってないし、続いてるし、すぐそばにあるし、他人ごとじゃないし、何も変わってないぞ!って思ってるから。
ハセオ:泉ちゃん、デモとか行ったりしてるよね。静岡もデモはけっこうある?
泉:静岡は最初はパッ!ってなって、その後冷めるのがすごく早い。なんでも早い。今はデモはなくて、でも駅前でやってる人たちはいる。あと、私は原発県民投票というのを少し手伝いしてて、その投票でそういう問題を決めたいっていう。ちょっとだけだけどね。その人たちは活動してるけど、やっぱり冷めちゃってるね。
ハセオ:ななえちゃんは最初はけっこうデモとか行ってたよね。今はあまり行ってないと思うけど。
ななえ:行けてないね。なんかそれもだめだと思うんだけど。
ハセオ:俺はあまりデモとか重要視してないんだよね。基本「日常」だから。俺のテーマは「日常闘争」なのね。だからデモとかはあまり重要視してないかな。
ななえ:デモとかは行けないから、高校の友達に会ったときに話したりはする。パンクじゃない子に話したり。ちょっと引かれるかな?と思いながらも、話してみるとね。なんか責められてる感じがしないような言い方ってないかなとは思う。私、あの女の子の友達だから、子供が食べ物とか選ばなきゃいけないとか、外で遊びたくても遊べないとかやだよね、みたいな。共感できるような言葉を入れつつ話せば、別に固くなんないかなとか思ったりしながら。何か言いたくても、たぶん言えなかったりするかもしれないしね。
ハセオ:俺も会社で原発の話なんて一切でないよ。やっぱパンクのなかぐらいかなあ。
泉:すごくショックだったのが、今思い出すだけでも気持ち悪いくらいなんだけど、会社で上司が「浜岡やめるんだったら、うちの地元持ってきてくれればいいのに」って言ってたの。いや、もう引いた。どん引きっていうか、悲しくなっちゃって。もうそのときは「いや、でも…」みたいな言葉も出なくて。お金が動くことはみんな分かってるんだけど、こんだけ意識の違いがあるんだって思ったら、悲しくなった。
ななえ:難しいよね。やっぱ勇気いるよね。明らかに同じような考え持ってるところで言うのはけっこう簡単だけど…
泉:そうだからやっぱ、それも勇気いるなあと思っちゃって。地元の人やバンドのメンバーにはこう言って伝わるかなと思いつつ原発のことを話したことはある。とりあえず静岡のデモに誘ったら、意外に普通に来てくれて。聞いたら、なんだ他人ごとじゃないじゃんみたいな。
ななえ:デモ自体どうやって参加するの?ってところから始まるから…
泉:何すんのみたいな?
ななえ:特別なものにしないために「ちょっとどう?」みたいに誘うのはいいかもね。私は泉ちゃんやひろえちゃんと原発の話をお酒の場でしたところで何なのとか思わないだろうって分かってるから話せるけどね。パンクに関わってない人たちって、楽しい場なのにそういう真面目な話?みたいなになっちゃうじゃん。ひろえちゃんは職場で原発の話とかする?
ひろえ:福島の方で地震があったときに原発大丈夫?みたいな、それぐらいの話題になっちゃいますね。私、自販機の関連会社なんですけど、自販機って震災あったときに一番叩かれたところで。電気のムダだみたいな。それでもいろいろ努力はしてるんですよ。なので、電気の話に関してはまあいいづらい部分ってありますね。ただでさえ、電気のことで目つけられてるのに、みたいな。
泉:じゃあ、原発なくなったらどうするの?って言いたい人たちいると思うけど、その人たちが一番考えてほしい。
ななえ:でも今原発の電気使ってない。
ひろえ:それでもね、やっていけてるのにね。
泉:でもそれすら知ってる人もやっぱ少ないんじゃないかって思っちゃう。そこに意識がいってないっていうか、当然みんなテレビ主体で話を聞いてるから、知らないんじゃないかなって思う。
ななえ:原始的なところまではさ、じゃあ電気使うなみたいな生活には戻れないと思うのね。だから、原発以外のところで、原発以外のもので電気をつくろうよみたいな。技術力とか知識とかないからあれだけど。原発の維持費だってすごくかかってるしね。さらに事故が起こっちゃえば、その後のリスクもすごいし、お金だってまたものすごくかかるしね。
ハセオ:3・11の直後にライブの「自粛」とかあったよね。あのときパンクスのツイッターをいろいろ見たら、こんなときライブやるのとんでもないという意見がけっこうあったよ。
ななえ:私、そのこと話したよね。「節電、節電」ってなんか気持ち悪くない?って。私の感覚がおかしいのかな?って。
泉:よく分からないけど、日本人だからそういうのがあるのかなと勝手に思っちゃってる。一緒に弔う?悲しむ?ほんとはそれはいいことなのかもしれないけど、ちょっと勘違いっていう気はする。
ハセオ:そうだね、戦い方がちょっとちがうよね。
ななえ:その人にはなれないからね。
泉:その考え方の人が多いっていうのは、やっぱ気質とかがあるのかなって思う。でも、本質的に考えれば「そこじゃないぞ」っていうことだよね。

「Revolucio(革命)」

ハセオ:「Revolucio」(革命)は、1曲めの「Decida momento」(決定的な瞬間)に続くような曲だね。パンクには革命があるという。「決定的な瞬間」は、パンクに出会ったときだけでなく、今もあったりする?たとえば、自分は「あ、変わった」とか。Malimplikiにとって「革命」って何?

ななえ:なんだろう、ひろえちゃん・泉ちゃんといると楽しいよね。曲とかもね、自画自賛であれなんだけど、ほんとに面白いものができるし。バンドなんて自己満足でいいかなと思っちゃってるからあれだけど、何気ない会話とかでも心地いいし。
泉:私はほんと自分の話になっちゃうけど、ドラムに変わって、ドラムをやり始めて、まあ下手だけど楽しくて。今までよりももっとパンクと密接になれた。パンクが私に降りてきた的な!(笑)今までは素敵だと思ってた・魅力的だと思ってたパンクに寄り添う感じだったんだけど、自分で曲をつくって表現することで、それを体現できてるのがすごく嬉しい。それが気持ちよくって。
ななえ:泉ちゃん、めちゃめちゃ現しまくってる(笑)すごく楽しそうだし、めちゃめちゃ出てるよね。笑っちゃうもんね。
泉:すべてが楽しい曲というわけじゃないし、そんなに楽しさを表現しなくてもいいのに出ちゃってるぽい(笑)
ハセオ:いや、大事だよ。
泉:それで、新しい自分が開花した的な?それがもしかしたら自分の革命かなみたいな?のはあるよね。まあ、ドラムは元々好きだった。元々好きだったことを自分が吸収できて、今こうやって7インチつくれて、自分のなかではプチ革命が起こってるような感じ。
ななえ:「Revolucio」(革命)って、大きな革命、歴史に残るような革命についてはうたってないのね。
ハセオ:それだけが革命じゃないと。革命って過程だよね。
ななえ:そうだね。私のなかでの身近な革命の意味は、日常のなかのちっちゃな変化。それを歌詞にしようと思って、題名はどうしようかな?と思ったんだけど、やっぱ「Revolucio」(革命)かなって。題名としては、固く聞こえちゃうかもしれないけどね。何か大きな変化みたいな。結果を何か残さなきゃいけないような革命とはまたちがう感じ。
ハセオ:ああ、デモで何かが変わったみたいな、そういうことだけではないってことだよね。
ひろえ:私は環境に恵まれすぎていて、親もすごく理解のある人だし、周りもそんなにうるさいこと言わないし、みたいな生活だったんですけど、どこか自分の人生を生きていないような感じがしていたんですね。
ななえ:初めて聞くかも(笑)ああ、そうなんだ。
ひろえ:まあ、ちょっとある機会に自分の好きにしたほうがいいなと思ったんですよ。それがすごい私のなかでは革命でしたね。たぶん、ななえちゃんとは前話したんですけど、私母親とすごく仲良くて、尊敬してるんです。それで母親と私の人生に関して、母親が困ったら私が何でもしなきゃいけないってどっかで思ってたんですよね。でもそうじゃなくて、彼女は彼女の人生なんだから、私は私の人生で、私の人生を彼女の人生のために費やすのはたぶん彼女も望んでないんだなって、なぜかふと思ったときがあって。サポートはするけど、自分を犠牲にはしないって思えたことが私のなかでは革命でしたね。
泉:女性ならではの感覚もあるよね、それね。
ひろえ:ほんとにでも母親はいわゆる「毒親」みたいな感じでとられるかもしれないですけど、そんなことなくて、私が純粋に好きで自分が犠牲になってでも守りたいみたいに勝手に思ってただけなんですけど。
泉:でもそれは愛としては素晴らしいことだと思う。
ひろえ:でもそうじゃないっていうところで。
泉:いい話聞いた。ヤバい、これ(笑)

「Imgita malamiko(仮想の敵)」

ハセオ:「Imagita malamiko」(仮想の敵)は、2回目のライブのときにななえちゃんの喋りもしっかり聞き取れて、いちばん印象に残った曲なのね。たとえば、在特会ってみんな知ってる?「仮想の敵」というのは、いわゆる在日朝鮮人とか在日外国人とか自分より下の者をつくって攻撃することにも言えるよね。この曲は在特会のことも意識したりしたのかな?俺はライブで見て、そういうことをうたった曲に聞こえたのね。「朝鮮人死ね」だとか「外国人出てけ」だとか、こうした排外主義的な主張に対するね。

全員:うん。
泉:取る人によって、自分が思い当たることが当てはまれば、そのメッセージは伝わってるってことになると思うよね。
ハセオ:この「仮想の敵」はすごく大事なこと言ってると思うのね。
ななえ:自分以外のところに攻撃したほうが逃げ場ができるっていうか。やっぱ自分自身が置かれてる状況や自分が接してる問題と向き合うのが本当は一番難しかったりするかなと思う。あと自分が生きづらかったりする原因はなんだろうと思うと、膨大な問題がいっぱいあるわけだよね。それを考えるくらいだったら、何か標的を見つけたほうが楽だったりとかするからね。でも標的を見つけちゃう人を批判しちゃうと、その人たちの逃げ場がなかったりするかなと思ったりする自分もいるの。だから、在特会にはまっちゃう人をおかしいよっていうのは言わなきゃいけないと思うけど、同時に私はそうなった過程も考えたいと思ってて。
ハセオ:けっこう若い人が増えてるみたい。女の子もいるみたい。ネットも宣伝媒体であるから、すぐ会員になれちゃうみたいな感じなのね。
泉:なんとなくちょっと読んでみて、私もそう思った。ちょっと外れちゃうかもしれないけど… 在特会で思ったのは、たとえば自分と仲のいい友だちが本当は朝鮮人だってなったときに全部をきれるのか?って。もしも自分が叩いてる当事者ー自分のルーツがそこだったってなったときに、それをどうやって自分のなかで処理できるのか聞いてみたいと思う。私は国が違うというのは、ざっくり言えば、県が違うことと同じような感覚。それは地域によって気質が違ったり、言葉が違ったりすることと同じで、感覚が違うことと同じだと思ってるから。まあ、私は勉強不足なんだけど、そもそも普通に生活してて、そこに敵意を感じるかなと。やっぱテレビの力なのかなと思っちゃったりする。あまり勉強してないから、細かいことは分からないけど、シンプルに考えて理解ができないんだよね。
ひろえ:そもそも攻撃すべきなのは、たとえば在特会の言う特権みたいなものが本当にあったとしたときに、もしそれが本当にあるとしたらそのシステムを攻撃すべきであって、人を攻撃すべきではないと思うんですね。本当にお互い言うべきことは言ったほうがいいと思うけど、だからといって、人に対して「死ね」とかそういうのは下品だよと思うし、何も解決しない。
泉:そう、何も解決しない。目的が分からない。敵をつくることで、自分たちが一丸となって気持ちいいっていうところで満足してるだけであって。
ハセオ:うさ晴らしなんだよね。
ななえ:たぶんなんだろう?また戻っちゃうけど、「これが私」って思ったら、何か変わるんじゃないかと思うけどね。みんな人の目を気にしすぎてるんじゃない?泉ちゃんみたいに他人にあんま興味ないほうがいんじゃない(笑)
ハセオ:環境もあるよね。家族の環境とかね。俺の親はうるさくなかったの。全然うるさくなくて、何でも好きなことやれみたいな親だった。だから、こういうふうになったのかなとは思う。
ななえ:もしかするとね、私だって知り合う人に知り合ってなかったら、在特会に入ってたかもしれないしね。
ひろえ: ほんとそれって紙一重だと思うんですよね。私が入っててもおかしくないと思うときもあります。
ハセオ:そういうことを想像するのはすごく大事だよね。在特会を自分たちとちがう人間と見ても、何も解決しないじゃない。やっぱ自分のなかにもそういう可能性があるんだって想像すること。
ななえ:そうだね、知り合った人によって自分たちだって在特会に入っちゃう危険性もあるかもしれない。危険性って言ったら、あれかもしれないけど…
泉:でもすごい思う。環境だよね。私もななえちゃんにその歌詞送ってもらったときに、文章には全然おこせなかったけど、考えてて。やっぱり本当に人間って弱いよね。弱くて、繫がりとかすごく求めるし。自分はこう考えるからこうでいいって、自分独りだったら、やっぱりそうは思えないんだよ。自分はなんとなくこれに賛同できないと思っても、それに染まっちゃう。自分がそこと繋がっていることで安心感とか自信とかが湧いてきて、それが本当に正しいか正しくないかはだれが決めることでもないんだけど、弱いから求めてしまう。そういったことに関して言えば、パンクに出会わなかった人がどこかにいっぱいいるわけで…
ハセオ: いいバンドだな。
ななえ:ラッキーかラッキーじゃなかったみたいな。
泉:だから、在特会の人たちを一概に否定するっていうのもまたちがう。うまく言えないけど、その人たちの人格を全否定するのもちがうと思うし。右翼から左翼に変わる人や中立になる人もたくさんいるわけで。どっちでもなく、両方とも理解できるっていう人もいるから、そういういろんな考え方に出会えることがやっぱ大事だよね。でもこういうのいいね。自分の考えもまとまる。
ななえ:いい機会だったね。

「Agado(行動)」

ハセオ:次「Agado」(行動)という曲について。これからMalimplikiでどういう企画をやっていきたい?

ななえ:うーん、ジャンルに拘らず面白いと思った人とやりたい。
泉:やりたい。
ななえ:もし面白いと思ったら、ヒップホップでもなんでもやりたい。広がりをつくれそうな人と。
ハセオ:ななえちゃんとはRhymester一緒に見に行ったよね。
ひろえ:みんなルーツも全然違うから。
ななえ:ひろえちゃん、エモっぽいのとか詳しいしね。
ひろえ:うん、どっちかというとそっちのほうが。
泉:意外とみんなニュースクールじゃなくて、なんだっけオールドスクール?好きだしね。
ななえ:だって私は短パンに半袖でスケボーとか持ってきちゃうようなニュースクール系だったしね。一時期ストレートエッジだったことあるしね。あれは宗教だと思ってやめたけど(笑)
ハセオ:企画の予定はあるの?
ななえ:今年は動きたいね。
ひろえ&泉:動きたい。
ななえ:曲として演奏できるようになったしね。曲が曲じゃなかったからね(笑)「えっーと、えっーと、最初は?」みたいな感じだったからね(笑)

「Malliberejo(代用監獄制度について)」

ハセオ:ラストの曲「Malliberejo」(代用監獄制度について)はどういう意図でつくったの?

ななえ:私自身は代用監獄制度というのは、やっぱり日本のドロドロした部分があらわれてると思う。泉ちゃんも言ってたけど、日本人の元々持ってる感覚?っていうのが根強いかなと思う。昔だったら自分の命をもって責任をとるみたいな切腹とかあったよね。自分を犠牲にして、集団のなかを乱したことによる責任を自分の命をもってとれというような感じでね。
泉:日本人の美的感覚じゃないけど…
ななえ:法律的に犯罪を起こした人は自分とはまったくちがう人間なんだっていう。だからその時点で自分とはまったくちがう人間だっていう感覚になっちゃうのかな。
泉:うん、規律を守ろうとする。まあ別に守ることが悪いわけじゃないから、説明難しい。右ならえみたいな感じなのかな。
ななえ:だってまだその人が絶対に犯罪を犯したわけないでもないのに、留置所に20何日も入れられて、何時間も取り調べをできるような環境ってね。疑いをかけられた人は人権も何もないんだっていう。
泉:フォローしてないもんね。
ななえ:そうそう。正しいか正しくないかっていうのは権力を持った人が決める仕組み自体も私はよく分からない。うまく言えないけど、自分も捕まる可能性があると思ったら、こういう仕組みがある日本は怖いと思っちゃう。
泉:知ったらみんな怖いはずだよね。だって何にもしてない人でもそうなるわけじゃん。この前、日本の映画で「ゴールデンスランバー」という映画を見たんだよ。伊坂幸太郎だったかな? 最近本読むようになって。まだ全部読んでないんだけど、その伊坂幸太郎って人の原作でその映画を見た。それは殺人を犯してないのに大統領暗殺の冤罪で何もしてない人が勝手に完全にはめられるというストーリー。その人に似せた整形のダミーをつくって、カメラに写させて、結局その人が犯人というように仕掛けられる。その人は捕まらずに逃げ切るんだけど、話としてはエンターティメントな映画だから面白く見れた。結局何もしてない人が完全にはめられて、この人が犯人でよしとされてしまうってことだってあるだろうし、個人一人一人は大きい敵にはかなわなかったりするわけじゃん。その方が楽なほうを選ぼうと思ったら、「やりました」っていうのが楽だっていうことになっちゃう。混乱して、もうそれ言えば楽になると思えばね。でも、その映画はどんでん返しがあって、大きい力の思いどおりにならず終わるから、私的には気持ちいい感じだった。単純にそれを見てても、これ他人ごとじゃないぞっていうか、今だって捕まってる人、冤罪かもしれない人いっぱいいるわけだよね。
ななえ:捕まって99.9パーセントが有罪になるから、裁判にかけられることによって、平等に自分のことを判断してもらえるのが無理なんだと思ったら、さらに今の代用監獄制とか怖いし、自白を強要される環境が整ってるというのを変えないとね。容疑者の段階で名前が出ちゃうっていうのはおかしいし。
泉:ダメでしょ。
ハセオ: 実名出しちゃうからね。
泉:その名前が出た時点で、有罪か無罪かおいといて、その人の人生にかなり大きな影響を及ぼしちゃうと思うよ。
ハセオ: たとえばさ、在日の人だったりするとすぐ実名報道されるとかあるじゃん。日本人だとまだ報道されないというのがあるけど、在日の人だと差別があってすぐ本名出されたりとかあるよね。
泉:そんなのほんと関係ないと思う。
ななえ:犯しちゃった罪、やってしまったことは償わないといけないと思うけど、私は死刑とか反対なの。どうしてかというと、前にもつながるけど、私はチャンスがあったからいろんなことを考えられる余裕があったし、余裕ができたから。自分の生き方とかを選べるチャンスがあったから。出来なかったらどうだったんだろう?と思ったりすると、私は犯罪犯した人すべてがダメな人だと思わないの。そして誰にも殺していい権利はないと思う。
ハセオ:自分の手を汚さずに、国に殺さすみたいなのが嫌だよ。
ななえ:うん。あとは死刑反対ですとか言ったりすると、税金の無駄だとかよく言われる。だって、そういうふうに言ってくる人いるじゃん。死刑反対してたら、更生に膨大な金かかるし、刑務所つくるにしても場所がないしみたいなね。犯罪犯した奴に食べ物なんて毎日やる金なんてもったいないしとかもそう。だからといって、1回でも2回でも3回でも過ちを犯したら、殺していいの?とか思っちゃうんだよね。
ハセオ:誰でも間違いは犯すからね。
泉:だって、自発的に犯罪を犯す人はいろんな経緯があってそこに至ってるわけじゃん。人の悪い部分とかダメな部分だけでその結果に至ってるわけではないと思う。別に擁護するわけじゃないけど、何があったのか、どうやってそうなったのかっていうところまで理解しないと、その人の罪ははっきりしないと思う。「もっと悪い人がいるのに」みたいになる。でも、それがシステム化されてるのは本当に怖いことだし、みんな犯罪っていうのは自分と関係ないと思ってるから。まあ、それは原発の問題にもちょっと通じるんだけど、自分と関係ないと思ってるから、「それはそれで当然でしょ」ってなっちゃうんだと思う。
ななえ:そんな犯罪じゃないと思ってても「犯罪」になっちゃうからね。だから、それを恣意的に決められるのが今の日本の環境だと思ったら、私はまず代用監獄制をなくすことと死刑がないほうがみんなにとってもいいんじゃないかなと思ってる。
泉:私は代用監獄制はなんとなく知ってたのかな。でもあまり知らなくて、ななえちゃんにちゃんと話を聞いて。それに対して、ななえちゃんが「私はこう思うんだけど」って言ってくれて、初めて考えられた。冤罪っていうのは当然知ってたけどね。でもそういうのはメッセージを発していくバンドのメンバーとしてはダメなのかもしれないよね。ななえちゃんやひろえちゃんがこういうことがあってって話してくれて、自分なりに考えて自分なりに答えを出して、みんなはどう?って発信できるっていうのがいいよね。そう、知らない人ともフラットというか、一緒に考えていこうみたいなね。そういう意味で「上からこうなんだ」「お前らどうなんだ」じゃないバンドのスタンスで提示していけるかな。
ハセオ:ななえちゃんも大人になったね(笑)
ななえ:前はすぐ泣いてたからね(笑)
泉:私は何かを知っただけでくやしいというのはやっぱりまだあって、人に伝える前に自分がうるうるするとかあるから。
ハセオ:悲しむことは大事だよね。自分自身が何かに気づいて、悲しんだりするのはすごく大事というか、悲しくならないととやっぱり分からないからね。心が痛くならないとね。
ななえ:えーん(笑)
泉:私もバンドやりながら学んでる。
ななえ:私もだよ。
ハセオ:俺もいまだにそうだよ。
泉:必ずしもこういうことをうたっているバンドが自分たちの答えを完全に見つけてないといけないなんて決まってないじゃん。別に自分のなかで答えはないんだけど、こういうことがあって「どうよ?こういうの嫌じゃね」みたいなのは大事かな。
ハセオ:すごく大事な話が聞けた。

「世間のしがらみ」

ハセオ:みんな20代後半ぐらいだよね?30代手前だと、世間的に「結婚」とかあるじゃん。この年代に差し掛かることで、そうした「世間体」は人にどういう影響を及ぼすと思う?このことについても親や育ってきた環境が関係あると思うんだけど。

ななえ:親はね、あきらめたみたい(笑)この前久しぶりに私の誕生日に合わせて高校時代の友達と会ったの。私含めて5人で集まったんだけど、そのうちの2人とは年に何回は頻繁に会ってたんだけど、もう2人は2年ぶりか3年ぶりかに会ったの。そしたらやっぱり私の見た目とか、髪の毛の色とか、着てる服とかで差が出てきてると感じた。案の定、年のことも考えて服とか選ぶようになってきたという話も出てきたりして。
泉:「えーっ」みたいな。
ななえ:1万円くらいの服を見て、「あっ、安くなってる」とか言ったり。「周りの高校生や大学生から見たら、私たちの年なんてもう20代後半だからおばちゃんだと思われるからね」みたいな発言が普通に出てきたり。そのことに対して衝撃受けた。それを聞いたことで、何もダメージ受けなかったけども。まあ、そういうプレッシャーをプレッシャーとも思わずに普通のことだと思いながら、私と同世代のパンクに触れることのない一般女性は感じてることなのかなと。それが興味深かった。興味深かったけれど、私の選んだきた人生は正しいと思ったかな。でもそこで「それおかしくない?」とは言わなかったけどね。「へぇー」って思っちゃった。
泉:私の先輩たちが「だってもう30代だからさあ」とか言ってて、こっちとしては「だから何?」っていうことはあった(笑)自分を年に合わせて変えるんだったら、極端な話、100才のときの状態何?みたいなのはあるよね。私はそこまで楽観的に考えてんだと自分で分かった。地元の女の先輩で34くらいなんだけど、年下に見えるようなパンクの女子の先輩がいるのね。おばさんになる前に死にたいって言ってたその人が赤ちゃん産んで、そんな考えとは無縁になって、でも着る服は変わってないけどね(笑)生きていれば人生のなかにはいろいろ変化があったり、逆に変化しないことが素敵だったりっていうのがあるから、自分を合わせるのは違和感あるよね。まあ、違和感感じない人はいいんだよ。
ななえ:そうだね。それを幸せだと思っているんだったらね。
泉:ただまあ誰かを否定しないでねと思いつつ、「それがあなたですから」って、私は認めるのでっていうのはある。「これが私だ」に繋がるけど。
ななえ:そうだね。私の偏った考え方かもしれないけど、そういう発言する人は「あなたはあなただよね」って認めてくれる人あまりいなかったりする。
泉:いない!
ななえ:たぶん、ちがう生き方を認めちゃうと、自分が否定された感じになっちゃうのかな。
泉:逆なのに。
ハセオ:いやだから、そういうことってあるじゃん。自分のことに照らし合わせてもね。
泉:そうなのかなー
ななえ:それがいいと思っているんだったら、勝手に貫き通せばいいじゃん。私のとこまで来ないでとか思っちゃう。
泉:ほんとお前の物差しで計るなと言いたい。たぶん自分が理解できないところは、あなたが計れないところですから計らなくていいですっていうね。でも、あなたが見ている世界だけがすべてじゃないから、自分が見えてなかった部分をお勉強のつもりで暖かく見守ってくださいって感じ。
ななえ:分かってくれなくていいよみたいな。
泉:ただ私の場合育ってきた環境は関係あるかな。
ななえ:泉ちゃんの親はけっこう理解あるよね。
泉:私の家族は、お父さんは静岡からお母さんは沖縄から東京に出てきて、美容師と化粧品屋で、そして静岡に戻ってきて一緒に美容室始めたような人たちなのね。それで自分たちの選んだように生きるっていうことを一緒に見てきたのはあるのかもしれない。だから、私がバンドやることにも理解がある。でも、自分が楽しいと思ったことをやるというのはやっぱあったよね。たぶん親が一般的な常識を持ってなくて、2人とも会社員として勤めるという経験を一度もしてないから、社会を知らない親と言えば知らない親なんだよ。スーツなんて持ってないみたいな。スーツっていつ着るのみたいな。お母さんなんか沖縄だからかなり雑だね(笑)
ハセオ:泉ちゃんはそれだよ(笑)
ななえ:いいなあ、うらやましい。私はすごく疎外感を感じてた。家庭のなかでもね。たぶん親も規律とか世間体とかをすごく気にする環境で育ったから、私にも期待していただろうし、こういう子であってほしいって思ってただろうしね。でも、私は目立つような悪いことはしてないんだよね。
泉:ただ親からすれば「外れてる」と思っちゃうんだよね。
ななえ:親は何を考えているか分からないのが一番怖かったって言ってた。
泉:何か犯罪を犯すんじゃないかみたいな。
ななえ:犯罪とまでは思っていなかったかもしれないけど、何か分からない怖さがあったんじゃないかな。
ハセオ:ちゃんと就職しないとかそういうレベルだと思うよ。
ななえ:就職活動とかしてなかったからね。なんかいろいろ考えちゃって、ここの企業はとか。
泉:まあ、それも大事だよね。私の場合は親にすべて話せる環境があった。本当はよくないけど、お母さんが沖縄だからお酒とかにけっこう緩かった。暗黙の了解みたいなのがあったりしてね。別にお母さんは飲まないし、言うほどゆるゆるではないんだけど、酒を飲むなら言われないよりは言ってくれたほうがいいみたいな感じだった。彼氏のことにしても誰々のところに行ってるとか、この人はこういう人って言えば理解してくれた。ライブに行って、打ち上げで朝まで飲んでも、どこにいるって分かれば理解してくれた。私は恵まれていたから、親には今のバンドのことも原発の問題とかも話せる。
ハセオ:親とも話せる?ああ、それはいいね。
泉:ガンガン話す。お父さんは古い人だから自衛隊とか徴兵制に対しては意見がちがうんだけど、それに対しても超言うしね。私が真摯に考えてるだなってことは伝わってると思う。原発の問題はお母さんが元々沖縄だから、私が戦争のことなんかに興味を持ってるのは分かってくれてる。お婆ちゃんもそういう話をしてくれてて、バックグラウンドがあるから。親はそういう問題に敏感になっていることに対してはよく思ってくれてると思う。
ハセオ:この質問に関しては、やはりななえちゃんが言うように「ちがう生き方を認めちゃうと、自分が否定された感じになっちゃう」ってことを自らも自覚して、自分はそうならないように努力することが大事なのかな。

「さいごに」

ハセオ:最後にバンドから何か言いたいことはある?

ななえ:「世の中は複雑なんだよ、そんな簡単じゃないんだよ」って言われるかもしれないけど、自分自身を否定しないで、間違えたことは間違えたって正直に言えることが大事だと思う。ちがう人もいるし、ちがう考えもあるけど、これこれが誰かを傷つけているんだと普通に言えたら、世の中は複雑にならないんじゃないかと思う。みんな自分自身が弱いって自覚すればいいと思う。
泉:「成長していこう」「学んでいこう」「研修していこう」「よくなろう」っていう気持ちがあれば、人は変化していけると思う。私ももう20代後半だけど、学んで変わっていけることが今たくさんあるから。それがたとえば、10代のときでも、40代でも50代のときでも気づいたときが革命だから。